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new books| April 1, 2008





Re-Object: Marcel Duchamps, Damien Hirst, Jeff Koons, Gerhard Merz
Schneider, Eckhard (ed.) -
Sebastian Egenhofer, John Gray, Herbert Molderings
120 illustrations, 120 in color, 176pp, 22 x 30cm , hardcover with jacket
Dutch / English 2007

「Re-Object(オブジェクト再び)」「Mythos(神話)」という二つの、ある意味では正反対のタームによって、20世紀美術の動向を再考しようというブレゲンツ美術館の展覧会第一弾のカタログ。ダミアン・ハーストの「サメ」を嚆矢とするObjectの流れとして扱われるのは、その祖であるマルセル・デュシャン、そしてジェフ・クーンズ、ゲルハルト・メルツである。彼らの共通点は「オブジェクトが出発点でありかつ焦点であるような表現の戦略を用いること」、Mytosとの対比で考えるなら作品という物質的対象が単なる象徴の道具等として奉仕することなくあるインパクトを持って表れてくるような表現をすること、だという。確かに出品された作品はどれも彫刻ではない三次元の立体ではあるが、その戦略が目指すものは多様であるはずだ。それらをあえて一本の線で結んでみようという野心的な試みに注目したい。(伊藤亜紗)





Monochromes: From Malevich to the Present
Rose, Barbara
Varas, Valerie / Rispa, Paula / Fabre,Gladys / K.Ho, Christopher / Trione, Vincenzo
161 illustrations, 161 in color , 240pp, 27 x 21cm, paperback
English 2006

単一の色で画面を覆う、という意味では黒や白以外にも青、赤、黄、グレーなど文字通りカラフルな作品群が歴史的に存在する。本書は2004年にマドリッドで開かれた同名の展覧会をひとつの契機として、モノクロームという問題系それ自体を系譜的に検証・考察した、カタログというよりはむしろ論集である。もっとも長い論文を寄せているバーバラ・ローズが指摘するように、モノクロームの絵画は奥行きを感じさせるような視覚的イリュージョンの排除という点で絵画の死と結びつけられるが、その結果見出されたのは一見して相反する二つの方向、すなわち一方でマテリアルに肉迫する「物質性」であり、他方では超越的ともいえる精神的な体験を希求する「神秘性」であった。巻末にはマレーヴィチからアンドレ、オキーフ、タピエスに至るまで作家たちの色をめぐる断章が集められており、一次資料も充実している。(伊藤亜紗)






Black Paintings: Robert Rauschenberg, Ad Reinhardt, Mark Rothko, Frank Stella
Rosenthal, Stephanie -
185 illustrations, 64 in color, 121 in b/w, 204pp, 32.5 x 24.8cm, hardcover
English 2006

戦後の40年代、ラウシェンバーグ、ステラ、ラインハルトロスコといったいわゆるNY派の作家たちがこぞって黒い絵画を描いた時期がある。同じ黒でもラウシェンバーグはテクスチャーで、ステラは縞で、ラインハルトは青や茶色との重ね合わせで、ロスコは染みで、と見せるポイントはさまざまだ。アプローチの多様さは黒にこめる意味の多様さでもあり、例えばそれは「消滅」を、あるいは「不可視性」を、「観者への反省の促し」を、「突破口」を、「移行」を意味する。作家ごとに付された綿密なテクストとともに集中して見ていくと、思わぬ発見がある。(伊藤亜紗)





Gordon Matta-Clark: You are the Measure
Sussman, Elisabeth (ed.) -
223 illustrations, 123 in color, 100 in b/w , 256pp , 12 x 9cm, hardcover
English 2007

建物を真っ二つにした大胆な作品で有名なアメリカのポスト・ミニマリズムの作家ゴードン・マッタ=クラークのホイットニー美術館で行なわれた展覧会カタログ。彼の70年代の制作の軌跡を紹介する。
遺棄された建築物をチェーンソーで切断する大胆なプロジェクトで有名なアメリカのポスト・ミニマルを代表する作家ゴードン・マッタ=クラークの展覧会カタログ。同時代の美術家や建築家たちに多大な影響力を誇りながらも1978年に35歳で夭折したマッタ=クラークの今回の展覧会は、アメリカにおける初めての回顧展である。その網羅的な収集は、彼の残したノートから、ドローイング、映像、写真、切断された建築物をも含み、シュルレアリストのロベルト・マッタの息子で、デュシャンの影響を受け、建築家としての精神・アクティヴィストとしての信念・詩人としての魂を併せ持つマッタ=クラークの多角的な面を浮かび上がらせるものである。(筒井宏樹)






Gabriel Orozco
Bois, Yve-Alain / Buchloh, Benjamin H. D.
Briony Fer
Illustrated throughout , 360pp, 30 x 28cm , hardcover
English 2007

メキシコ生まれの現代を代表する作家ガブリエル・オロツコのモノグラフ。常にカテゴリーを否定する作家である彼は、街のゴミを収集して作ったオブジェ、巨大なスケールのインスタレーションや、またドローイング、写真、ビデオなど多様な形式で、空間と時間の関係、またオブジェと身体の関係といった問題を探求する。 2000年以降、アートシーンにおいて中南米の作家たちの活躍が顕著になってきたが、その先駆的存在であるメキシコ出身の作家ガブリエル・オロツコの展覧会カタログ。インスタレーション、写真、オブジェなどの制作を行っているが、彼の作品は、日常的なモチーフを使用し、その構造を組みかえ、また視点をずらすことで、鑑賞者に日頃の経験を問い直す契機をもたらす。今回の展覧会は、ヨーロッパで先に評価を得ていた彼にとって、アメリカで初の大規模な個展となる。本書は、アーティストであるオロツコ自身がカタログ製作に加わり、1990年から2000年までの十年間の作品を豊富な図版とともに網羅し、オロツコに関する本のなかでもっとも包括的な内容となっている。詳細な年譜はもちろん、執筆陣には、ベンジャミン・ブクローやイヴ・アラン=ボアといった批評家をはじめ、ドミン・オルテガなどのアーティストも加わっている。(筒井宏樹)